筑波大学が学術目的で運営するVPN Gateは、無料で利用できる非常に便利なサービスです。しかし、無料で誰でも使えるがゆえに、「急に接続できなくなった」というトラブルも少なくありません。
私が長年VPN Gateを使ってきた経験から、接続できない時に試すべきトラブルシューティングの手順を体系的にまとめました。この記事を読めば、ほとんどの問題は解決できるはずです。

まず試すべき基本的な解決策|簡単なものから順番に解説
VPN Gateに接続できない時、原因は意外と単純な場所にあることが多いです。複雑な設定を触る前に、誰でも簡単に試せる基本的な解決策から実行していきましょう。私が接続トラブルに陥った際も、ほとんどがこの段階で解決しています。
別のサーバーに接続してみる
VPN Gateの接続失敗で最も多い原因は、接続しようとしているサーバー自体の問題です。VPN Gateは世界中のボランティアが提供するサーバーで成り立っているため、特定のサーバーが予告なくオフラインになったり、不安定になったりすることは日常茶飯事です。
まずは公式のサーバーリストを更新し、別のサーバーを選んで再接続を試みてください。サーバーを選ぶ際は、「スコア」が高いものを選ぶのが基本ですが、「回線速度」が速く「Ping」値が低いサーバーを選ぶと、より快適な通信が期待できます。
時間帯を変えて接続する
VPN Gateは無料であるがゆえに、利用者が集中する時間帯があります。特に平日の夜間や週末はサーバーが混雑し、接続が不安定になったり、速度が著しく低下したりします。
もし急ぎでなければ、利用者が少ないと思われる早朝や深夜などの時間帯に接続を試みてください。時間帯を変えるだけで、あっさりと接続できるケースは少なくありません。
PCやルーターを再起動する
「再起動で直る」というのはITトラブルの基本ですが、VPN接続においても非常に有効です。お使いのパソコンやスマートフォン、それにWi-Fiルーターといったネットワーク機器は、長時間稼働することで一時的な不具合を抱えることがあります。
一度すべてのデバイスの電源を落とし、ルーターの電源プラグを抜いて30秒ほど待ってから再度入れ直してみてください。この一手間だけで、ネットワークの状態がリフレッシュされ、問題が解消されることがあります。
公式ミラーサイトを利用する
お住まいの国や利用しているプロバイダによっては、VPN Gateの公式サイト(vpngate.net)自体へのアクセスが制限されている場合があります。公式サイトに繋がらない場合は、当然サーバーリストの取得もできません。
その場合は、世界中に分散して設置されている「ミラーサイト」を利用します。ミラーサイトは公式サイトの複製であり、同じように最新のサーバーリストやクライアントソフトを入手できます。事前にミラーサイトのURLをブックマークしておくことを強く推奨します。
ソフトウェアや設定が原因の場合の対処法
基本的な解決策を試しても接続できない場合、次はお使いのPC内部のソフトウェアやネットワーク設定に原因がある可能性を考えます。セキュリティソフトの干渉や、ネットワーク設定の不整合は、VPN接続を妨げる代表的な原因です。
セキュリティソフトの干渉を確認する
セキュリティソフト(アンチウイルスソフトやファイアウォール)は、PCを保護するために通信を監視しています。この機能が過敏に反応し、VPNの正常な通信を脅威と誤認してブロックしてしまうことがあります。
ファイアウォールとアンチウイルスソフトを一時的に無効化
問題の原因を切り分けるために、セキュリティソフトの機能を一時的に無効にしてみてください。この状態でVPN接続に成功した場合、原因はセキュリティソフトにあると断定できます。無効化したままでは危険なので、接続確認後は必ず元の設定に戻してください。
VPNクライアントを例外設定に追加する
原因がセキュリティソフトだと特定できたら、そのソフトの設定画面を開き、VPN Gateのクライアントソフト(SoftEther VPN Clientなど)を「例外リスト」や「許可リスト」に追加します。これにより、セキュリティ機能を有効にしたままで、VPNの通信だけを安全に許可できます。
ネットワーク設定を見直す
意図せずネットワーク設定が破損していたり、古くなっていたりすることで、接続に失敗するケースがあります。いくつかの簡単な手順で、設定を正常な状態に戻せます。
DNSキャッシュのクリアとパブリックDNSの利用
DNSは、ウェブサイトのドメイン名(例|vpngate.net)をIPアドレスに変換する重要な仕組みです。このDNSのキャッシュが古くなっていると、サーバーに正しくアクセスできません。コマンドプロンプトなどからDNSキャッシュをクリアするコマンドを実行してみてください。
それでも解決しない場合は、お使いのネットワーク設定でDNSサーバーを「Google Public DNS (8.8.8.8)」や「Cloudflare DNS (1.1.1.1)」といったパブリックDNSに一時的に変更するのも有効な手段です。
OSのネットワークリセット機能
WindowsやmacOSには、ネットワーク設定全体を工場出荷時の状態に戻す「ネットワークのリセット」機能が搭載されています。これは最終手段に近いですが、複雑な設定トラブルを根本から解消できる可能性があります。
クライアントソフトを最新版に更新する
VPN Gateのサーバーやプロトコルは日々更新されています。古いバージョンのクライアントソフトを使い続けていると、新しい仕様に対応できず、サーバーリストの取得失敗や接続エラーの原因となります。
必ず公式サイトか公式ミラーサイトから、最新版の「SoftEther VPN Client + VPN Gate Client Plug-in」をダウンロードし、上書きインストールしてください。最新版には重要なセキュリティ修正が含まれていることも多いです。
特定のエラーコードが表示される場合の解決策
接続失敗時に表示されるエラーコードは、問題解決のための最大のヒントです。焦らずにコード番号を読み取り、適切な対処法を実行しましょう。ここでは、私がよく遭遇した代表的なエラーとその対策を紹介します。
プロトコル別の一般的なエラーと対策
VPN Gateへの接続時には、さまざまなエラーコードが表示されることがあります。以下に代表的なものをまとめました。
エラーコード | 一般的な意味 | 主な原因と対処法 |
エラー 691 | 認証の失敗 | L2TP/IPsec接続で、ユーザー名・パスワード・事前共有キーのいずれかが間違っています。すべて「vpn」(半角小文字)になっているか確認してください。 |
エラー 809 | ネットワークタイムアウト | ファイアウォールやルーターがVPN通信をブロックしています。セキュリティソフトの設定を見直すか、ファイアウォールを通過しやすいSSL-VPNプロトコルに変更します。 |
エラー 720 | プロトコルの構成エラー | PCのネットワーク関連のシステムファイルが破損している可能性があります。OSの「ネットワークのリセット」機能や、WAN Miniportドライバの再インストールを試します。 |
各プロトコルの設定時の注意点
使用するプロトコルによって、つまずきやすいポイントが異なります。設定を再確認してみましょう。
L2TP/IPsec|事前共有キーの確認
L2TP/IPsecでの接続失敗で最も多いのが、事前共有キー(Pre-shared key)の設定ミスです。VPNのプロパティから詳細設定を開き、事前共有キーとして「vpn」が正しく入力されているか、今一度確認してください。
OpenVPN|設定ファイルの更新と管理者実行
OpenVPNで接続する場合、サーバーごとに専用の設定ファイル(.ovpnファイル)が必要です。サーバーのIPアドレスは頻繁に変わるため、接続の都度、公式サイトから最新の.ovpnファイルをダウンロードし直すのが基本です。Windowsでクライアントソフトを使う際は、アイコンを右クリックして「管理者として実行」しないと接続に失敗することがあります。
特殊なネットワーク環境での高度なトラブルシューティング
基本的な対策をすべて行っても解決しない場合、問題はより複雑なネットワーク環境に起因しているかもしれません。特に、特定のインターネットプロバイダを利用している場合に発生する問題について解説します。
自宅のネット回線が原因の場合(MAP-E/DS-Lite)
NURO光などの一部のプロバイダでは、「MAP-E」や「DS-Lite」という特殊な接続方式が採用されています。これはIPv4アドレスを複数のユーザーで共有する技術で、この仕組みが特定のVPNプロトコルの通信を妨げることがあります。
この環境では、特にL2TP/IPsecプロトコルが接続に失敗するケースが多く報告されています。最も簡単で効果的な解決策は、プロトコルを「SoftEther VPN (SSL-VPN)」に変更することです。SSL-VPNは一般的なウェブサイト閲覧と同じ通信に見せかけるため、MAP-EやDS-Lite環境でも問題なく接続できる可能性が高いです。
IPv6が接続に影響している場合
お使いのネットワーク環境でIPv6が有効になっていることが、意図せずVPN接続の邪魔をすることがあります。VPN接続は成功しているように見えても、データが全く流れなかったり、そもそも接続に失敗したりするケースです。
問題の切り分けとして、お使いのPCのネットワーク設定から、一時的にIPv6を無効にしてみてください。これで接続が改善する場合、原因はIPv6の競合にあると特定できます。これはあくまで原因究明のための一時的な措置です。
MTU値を調整して通信を最適化する
MTU(Maximum Transmission Unit)とは、一度に送信できるデータのかたまりの最大サイズのことです。VPNを使うと、このデータのかたまりに暗号化情報などが追加されるため、サイズが大きくなりすぎてしまい、通信が不安定になることがあります。
コマンドプロンプトやターミナルで特定のpingコマンドを実行することで、自分の環境に最適なMTU値を見つけ出せます。特定した最適値をOSのネットワークアダプタに設定することで、通信が安定し、速度が改善されることがあります。
VPN Gateを安全に利用するための注意点
VPN Gateは非常に便利なツールですが、その利用にはいくつかの重要な注意点があります。特にセキュリティとプライバシーに関しては、商業的なVPNサービスとは根本的に異なる点を理解しておく必要があります。
プライバシー保護は期待できない|ログの記録について
多くの有料VPNサービスが「ノーログポリシー(通信記録を取らない方針)」を掲げているのに対し、VPN Gateは学術研究と不正利用防止を目的として、詳細な接続ログを記録・保持する方針を明確にしています。
記録されたログは、法執行機関からの要請があれば開示されることになっています。したがって、VPN Gateは匿名性を確保するためのツールではなく、あくまで検閲回避や地理的制限のあるコンテンツにアクセスするためのツールだと認識してください。
中間者攻撃のリスクを理解する
VPN Gateの仕組みには、悪意のあるサーバー運営者によって通信内容が盗聴・改ざんされる「中間者攻撃」のリスクが存在することが、学術研究で指摘されています。これは、クライアントソフトがサーバーの証明書を厳密に検証しない仕様に起因するものです。
このリスクがあるため、VPN Gateを経由して銀行の取引、オンラインショッピングの決済、仕事の機密情報など、重要な個人情報やデータを送受信することは絶対に避けるべきです。
安全な利用のためのベストプラクティス
上記のリスクを理解した上で、VPN Gateをより安全に利用するためには、以下の点を徹底してください。
- HTTPS通信の確認|訪問するサイトが必ず「https://」で始まっているか確認し、通信の二重暗号化を図る。
- 機密情報を扱わない|ログイン情報、クレジットカード番号、個人情報などを扱う通信は行わない。
- 用途を限定する|あくまで検閲回避やコンテンツ視聴など、リスクの低い用途に限定する。
- サーバーを過信しない|接続先のサーバーが悪意を持っている可能性を常に念頭に置く。
それでも解決しない場合|代替案の検討
ここまで紹介したすべてのトラブルシューティングを試しても接続できない、あるいはVPN Gateの仕様やリスクが自身の利用目的に合わないと感じた場合は、他の選択肢を検討する時期かもしれません。
有料VPNサービスのメリット
安定したVPN接続を求める場合は、有料VPNサービスの利用をおすすめします。
有料VPNサービスは、高速な接続速度、高度なセキュリティ機能、24時間のサポートなどを提供するため、安定したVPN接続を利用できます。
現在、人気の有料VPNサービスは「NordVPN」「ExpressVPN」「Millen VPN」「CyberGhostVPN」です。各VPNサービスの比較は下の表の通り。
NordVPN | ExpressVPN | MillenVPN
![]() | CyberGhostVPN | |
---|---|---|---|---|
管轄 | パナマ | 英領ヴァージン諸島 | 日本 | ルーマニア |
ノーロギング | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
暗号化規格 | AES-256-GCM | AES-256-GCM | AES-256 | AES-256 |
暗号化プロトコル | OpenVPN IKEv2 / IPsec WireGuard | OpenVPN IKEv2 L2TP/IPsec Lightway | OpenVPN IKEv2 WireGuard | OpenVPN IKEv2 WireGuard |
サーバー数 | 7,000台+ | 3,000台+ | 2,000台+ | 9,773台+ |
対象国数 | 108 | 105 | 106 | 91 |
同時接続 | 10 | 8 | 無制限 | 7 |
1ヶ月契約 | 2,110円/月 | 1,942円/月 | 1,496円/月 | 1,790円/月 |
6ヶ月契約 | – | – | – | 1,000円/月 |
1年契約 | 800円/月 | 1,000円/月 | 594円/月 | – |
2年契約 | 500円/月 | 748円/月 | 396円/月 | 320円/月 |
日本語対応アプリ | レ | レ | レ | – |
まとめ

筑波大学のVPN Gateは、無料でインターネットの制約を回避できる強力なツールです。接続できないトラブルが発生した際は、本記事で紹介した「簡単な解決策から順に試す」という手順を踏むことで、ほとんどの問題は解決に向かうはずです。
サーバーの変更や再起動といった基本的な対策から、ソフトウェアの設定見直し、さらにはネットワーク環境に応じた高度な対策まで、原因を一つずつ切り分けていきましょう。
重要なのは、VPN Gateがボランティアベースの学術プロジェクトであるという特性を理解することです。不安定さは仕様の一部と割り切り、プライバシー保護のツールではないことを認識した上で、そのメリットを賢く活用していくことが大切です。