インターネット上でのプライバシー保護を強化するため、多くのユーザーがVPN(Virtual Private Network)を活用しています。
特に、開示請求による身元特定を避けたいと考える人々にとって、VPNは有効なツールです。 しかし、VPNを使用したからといって、開示請求を完全に回避できるわけではありません。
本記事では、VPNを用いて誹謗中傷リスクを最小限にする方法や、その限界について詳しく解説します。
VPNは開示請求を回避できるのか?

VPNを利用すると、通信が暗号化され、IPアドレスが変更されるため、匿名性が向上します。
しかし、開示請求を完全に回避することは困難です。
開示請求の仕組み
開示請求とは、被害者が加害者の情報を取得するために、プロバイダーや関連機関に対して情報開示を求める手続きです。
一般的な流れは以下の通りです。
- 発信者情報開示請求:被害者がサイト運営者やSNSプラットフォームに対し、投稿者のIPアドレスの開示を求める。
- プロバイダーへの開示請求:開示されたIPアドレスをもとに、インターネットプロバイダーに対して契約者情報の開示を請求。
- 裁判所の判断:プロバイダーが拒否した場合、裁判所の許可を得て開示請求が進む。
VPNを利用すると、プロバイダーにはVPNサーバーのIPアドレスしか記録されません。そのため、直接的な身元特定は困難になります。
VPNが開示請求を回避できない理由
VPNを使用しても、開示請求を完全に防ぐことは難しい理由は以下の通りです。
- VPNプロバイダーがログを保持している可能性
- VPNサーバーの国によっては情報開示義務がある
- VPN接続が切れた際に実IPが漏洩するリスク
- Torなどの匿名化技術と比較すると安全性が低い場合がある
VPNの選択や設定を適切に行うことで、匿名性を向上させることはできますが、完全に開示請求を回避する手段ではありません。
誹謗中傷リスクを最小限にするVPNの活用方法

VPNを活用して誹謗中傷リスクを軽減するには、以下の方法が有効です。
ノーログVPNを選択する
ノーログVPNとは、ユーザーの接続履歴やIPアドレスの記録を保持しないVPNサービスのことです。
ノーログVPNを選ぶことで、万が一開示請求があっても、VPNプロバイダーが情報を提供できない状態にできます。
おすすめのノーログVPNは以下の4サービスです。
NordVPN | ExpressVPN | MillenVPN
![]() | CyberGhostVPN | |
---|---|---|---|---|
管轄 | パナマ | 英領ヴァージン諸島 | 日本 | ルーマニア |
ノーロギング | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
暗号化規格 | AES-256-GCM | AES-256-GCM | AES-256 | AES-256 |
暗号化プロトコル | OpenVPN IKEv2 / IPsec WireGuard | OpenVPN IKEv2 L2TP/IPsec Lightway | OpenVPN IKEv2 WireGuard | OpenVPN IKEv2 WireGuard |
サーバー数 | 7,000台+ | 3,000台+ | 2,000台+ | 9,773台+ |
対象国数 | 108 | 105 | 106 | 91 |
同時接続 | 10 | 8 | 無制限 | 7 |
1ヶ月契約 | 2,110円/月 | 1,942円/月 | 1,496円/月 | 1,790円/月 |
6ヶ月契約 | – | – | – | 1,000円/月 |
1年契約 | 800円/月 | 1,000円/月 | 594円/月 | – |
2年契約 | 500円/月 | 748円/月 | 396円/月 | 320円/月 |
日本語対応アプリ | レ | レ | レ | – |
キルスイッチ機能を有効にする
キルスイッチとは、VPN接続が切れた際に自動的にインターネット接続を遮断する機能です。
この機能を有効にしておくことで、一時的な接続切れによるIPアドレス漏洩を防ぐことができます。

VPNとTorを併用する
Tor(The Onion Router)は、インターネット上で匿名性を高めるための技術です。
VPNとTorを組み合わせることで、以下のような利点があります。
- VPNのIPアドレスがTorネットワークの入口として使われ、元のIPが秘匿される
- Torの匿名性とVPNの暗号化を組み合わせてセキュリティを向上させる
ただし、VPNとTorの組み合わせは通信速度が低下しやすいため、用途に応じて使い分けることが重要です。

VPNサーバーの所在地を考慮する
VPNサーバーの所在地によって、開示請求への対応が異なります。
例えば、以下のような国のVPNサーバーを選ぶことで、プライバシー保護を強化できます。
国名 | 特徴 |
---|---|
スイス | 厳格なプライバシー保護法があり、データ保持義務がない |
パナマ | VPNプロバイダーに対する監視がほとんどなく、安全性が高い |
セーシェル | 法的規制が緩く、政府からの開示請求リスクが低い |
逆に、アメリカやイギリスなどの国に拠点を置くVPNは、政府の監視対象になりやすいため注意が必要です。
VPNの限界と法的リスク

VPNを使用することで匿名性を高めることはできますが、違法行為を行えば法的責任を免れることはできません。
法的リスクを理解する
VPNを利用しても、次のような場合には開示請求の対象になる可能性があります。
- 誹謗中傷や名誉毀損を行った場合
- 著作権侵害(違法ダウンロードなど)を行った場合
- 犯罪行為(詐欺や不正アクセス)に関与した場合
特に、国内の裁判所がVPNプロバイダーに対して開示命令を出した場合、情報が提供されるケースもあります。
違法行為はVPNでも防げない
VPNはプライバシーを保護するためのツールであり、法律を超越するものではありません。
- 違法行為を行えば、VPNを利用していても責任を問われる可能性がある
- 日本国内のプロバイダーが関与している場合、VPNを経由しても情報が特定されることがある
- VPNを使用する際は、法的リスクを十分に理解し、適切な使い方をすることが重要
まとめ|VPNだけでは開示請求を完全に防げない

VPNは、インターネット上でのプライバシーを強化する強力なツールですが、開示請求を完全に回避できるわけではありません。
VPNの種類やその運営国の法的状況、そして利用者の行動次第では、捜査機関によって身元が特定される可能性もあります。
安全にインターネットを利用するためには、VPNに頼るだけでなく、その他のセキュリティ対策やプライバシー保護の実践が重要です。