VPNを利用する際、「固定IPアドレス」というオプションを目にすることがあります。通常のVPN接続と何が違うのか、そもそも自分に必要なのか、疑問に思う方も多いでしょう。結論から言えば、VPNにおける固定IPアドレスの必要性は、利用目的によって明確に分かれます。
私自身、用途に応じてVPNのIPタイプを使い分けていますが、固定IPには強力なメリットがある一方で、すべてのユーザーにとって最適解ではありません。この記事では、VPNで固定IPアドレスを利用するメリットとデメリットを徹底的に比較解説し、どのような場合に必要となるのかを明らかにします。
VPNにおける固定IPアドレスとは?

VPNにおける固定IPアドレスの役割を理解するために、IPアドレスの基本とVPNの仕組みについて整理します。利用シーンをイメージしながら読み進めてください。
IPアドレスの基本|固定IPと動的IPの違い
IPアドレスは、インターネットに接続された機器に割り当てられる「インターネット上の住所」のようなものです。この住所の割り当て方には、大きく分けて2種類あります。
- 動的IPアドレス|接続するたびに変わる可能性があるIPアドレスです。プロバイダーが保有するIPアドレスの中から、空いているものが一時的に貸し出されます。一般的な家庭用インターネット接続では、こちらが主流です。
- 固定IPアドレス|契約者専用に割り当てられ、常に変わることのないIPアドレスです。住所が固定されているため、特定の場所として認識されやすくなります。
通常のインターネット利用では動的IPで問題ありませんが、外部から特定の機器へ安定的にアクセスしたい場合に固定IPが必要となります。
VPNの仕組みとIPアドレスの関係性
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的な専用トンネルを作り、通信内容を暗号化する技術です。これにより、第三者によるデータの盗聴や改ざんを防ぎます。
VPNを利用すると、あなたの通信は一度VPNサーバーを経由してから目的のサイトにアクセスします。そのため、アクセス先のサイトからは、あなたの元のIPアドレスではなく、VPNサーバーのIPアドレスが見えます。
多くのVPNサービスでは、1つのVPNサーバーのIPアドレスを多数のユーザーで共有する「共有IPアドレス」方式が採用されています。この場合、IPアドレスは動的IPと同様に変動することがあります。一方、「固定IPオプション」を利用すると、あなた専用の変わらないVPNサーバーのIPアドレスが提供されます。
VPNで固定IPアドレスを利用するメリット

VPNで固定IPアドレスを利用することには、特にセキュリティと利便性の面で大きな利点があります。私が固定IPを活用する際に感じるメリットを3つのポイントで解説します。
メリット1|アクセス制限(IPホワイトリスト)によるセキュリティ強化
固定IPの最大のメリットは、アクセス制御によるセキュリティの強化です。企業や組織の内部システム、あるいは機密情報を扱うクラウドサービスでは、セキュリティ対策としてIPアドレスによるアクセス制限(IPホワイトリスティング)が広く採用されています。
これは、あらかじめ登録された信頼できるIPアドレスからのアクセスのみを許可し、それ以外のIPアドレスからのアクセスをすべて遮断する仕組みです。私が業務で重要なデータにアクセスする際も、VPN経由の固定IPを会社のシステムに登録し、許可された経路以外からの不正アクセスを防止しています。
メリット2|サーバー公開やリモートアクセスの安定性向上
自宅やオフィスに設置したサーバー(Webサーバーやファイルサーバー、NASなど)へ外部から安全にアクセスしたい場合、固定IPは非常に有効です。接続先のIPアドレスが固定されていれば、いつでも迷うことなく目当てのサーバーに到達できます。
もし動的IPアドレス環境でサーバーを運用すると、IPアドレスが変わるたびに接続設定を変更しなければならず、最悪の場合、外部からアクセスできなくなります。固定IPは、安定したリモートアクセス環境を構築するための基盤となります。
メリット3|特定サービス利用時の認証回避と信頼性確保
オンラインバンキングや一部のWebサービスでは、普段と異なるIPアドレスからログインしようとすると、不正アクセスを疑われて追加の認証(CAPTCHAや二段階認証)を求められることがあります。共有IPのVPNを利用すると、接続のたびにIPアドレスが変わるため、この認証が頻繁に発生し、ストレスを感じることがあります。
固定IPアドレスを利用すれば、常に同じIPアドレスからアクセスするため、サービス側から「信頼できるいつものアクセス元」として認識されやすくなります。これにより、煩わしい認証プロセスを回避し、スムーズにサービスを利用できる可能性が高まります。
VPNで固定IPアドレスを利用するデメリットと注意点

利便性の高い固定IPですが、導入前に知っておくべきデメリットや注意点も存在します。コスト面やプライバシーの観点から慎重に判断する必要があります。
デメリット1|追加コストの発生
固定IPアドレスは、標準のVPNサービスに含まれておらず、追加オプションとして提供されるケースがほとんどです。そのため、通常のVPN利用料金に加えて、月額数百円から数千円程度の追加費用が発生します。
個人利用でコストを最優先する場合、この追加料金はデメリットとなります。本当に固定IPが必要なのか、そのコストに見合う価値があるのかを事前に評価することが重要です。
デメリット2|攻撃対象領域の増大リスク
IPアドレスが固定されるということは、外部の攻撃者にとって「標的が常に同じ場所にある」ことを意味します。動的IPであればIPアドレスが変わることで攻撃を回避できる側面もありますが、固定IPではその住所が公開情報となるため、狙われやすくなるリスクがあります。
具体的には、特定のIPアドレスに対してポートスキャンを行ったり、サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)を仕掛けたりするハードルが下がります。そのため、固定IPを利用する場合は、ファイアウォールの設定強化やセキュリティソフトの導入など、通常以上の防御策を講じる必要があります。
デメリット3|匿名性の低下に関する懸念
VPNを利用する主な目的の一つに、IPアドレスを隠してオンラインでの匿名性を高めることがあります。共有IPアドレスでは、多数のユーザーが同じIPアドレスを使うため、個人の特定が困難になります。
しかし、固定IPアドレスを自分専用で使用する場合、そのIPアドレスでの活動はすべて自分自身に紐づくことになります。VPNによる通信の暗号化は維持されますが、匿名性という観点では共有IPに劣ることを理解しておく必要があります。プライバシー保護を最優先する用途には不向きです。
固定IPアドレスが必要なケースと不要なケース

メリットとデメリットを踏まえ、具体的にどのような場合に固定IPアドレスを選ぶべきか、判断基準を示します。
固定IPアドレスを強く推奨する利用シーン
以下のような目的でVPNを利用する場合、固定IPアドレスの導入を強く推奨します。利便性やセキュリティ要件を満たすために不可欠と言えます。
| 利用シーン | 必要な理由 |
| ビジネスでのリモートアクセス | IPアドレス制限がかけられた社内システムやクラウドサービスへアクセスするため。 |
| 自宅サーバー・NASの運用 | 外部から安定して自宅の機器にアクセスするための固定された接続先として。 |
| 特定の取引先システムへの接続 | 取引先からIPアドレスの登録を求められる場合。 |
| オンラインバンキングの安定利用 | 頻繁な追加認証を避け、信頼できるアクセス元として認識させるため。 |
動的IPアドレス(共有IP)でも問題ない利用シーン
一方で、以下のような一般的なVPNの利用方法であれば、コストのかかる固定IPアドレスは必要ありません。標準的な共有IPのVPNサービスで十分目的を果たせます。
- 公衆Wi-Fi利用時のセキュリティ確保|カフェやホテルのフリーWi-Fi利用時に通信を暗号化するのが目的の場合。
- 一般的なWeb閲覧でのプライバシー保護|IPアドレスを隠してWebサイトを閲覧したい場合。匿名性の観点からは共有IPが有利です。
- 動画配信サービスの地域制限回避|海外から日本のサービスを利用するなど、IPアドレスの場所を変更したい場合。
固定IPの代替策|ダイナミックDNS(DDNS)の活用
コストを抑えつつ自宅サーバーへアクセスしたい個人ユーザー向けに、ダイナミックDNS(DDNS)という代替手段があります。DDNSは、変動する動的IPアドレスに対して固定のドメイン名(例: myhome.ddns.net)を紐づけるサービスです。IPアドレスが変わっても、DDNSサービスが自動で新しいIPアドレスを追跡し、ドメイン名でアクセスできるようにしてくれます。
ただし、IPアドレスの更新には若干のタイムラグが生じる可能性があり、ビジネスレベルの信頼性を求める場合には不向きです。あくまで個人用途や小規模な利用における次善策として捉えるのが良いでしょう。

固定IPアドレスのVPNを提供するVPNサービス

このサイトでおすすめするVPNサービスは「NordVPN」「ExpressVPN」「MillenVPN」「CyberGhostVPN」です。
VPN選びに迷ったら、この4つのVPNサービスから選んでくださいね。
| NordVPN | ExpressVPN | MillenVPN
| CyberGhostVPN | |
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| 管轄 | パナマ | 英領ヴァージン諸島 | 日本 | ルーマニア |
| ノーロギング | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 暗号化規格 | AES-256-GCM | AES-256-GCM | AES-256 | AES-256 |
| 暗号化プロトコル | OpenVPN IKEv2 / IPsec WireGuard | OpenVPN IKEv2 L2TP/IPsec Lightway | OpenVPN IKEv2 WireGuard | OpenVPN IKEv2 WireGuard |
| サーバー数 | 7,000台+ | 3,000台+ | 2,000台+ | 9,773台+ |
| 対象国数 | 108 | 105 | 106 | 91 |
| 同時接続 | 10 | 8 | 無制限 | 7 |
| 1ヶ月契約 | 1,620円/月 | 1,910円/月 | 1,496円/月 | 1,790円/月 |
| 6ヶ月契約 | – | – | – | 1,000円/月 |
| 1年契約 | 620円/月 | 734円/月 | 594円/月 | – |
| 2年契約 | 390円/月 | 513円/月 | 396円/月 | 320円/月 |
| 日本語対応アプリ | レ | レ | レ | – |
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まとめ

VPNにおける固定IPアドレスの必要性は、利用目的によって決まります。IPアドレス制限のあるシステムへのアクセスや、サーバーの安定運用といった明確な目的がある場合には、固定IPは強力な武器となります。一方で、一般的なプライバシー保護やセキュリティ強化が目的ならば、追加コストを払ってまで導入する必要性は低いです。
私が常に意識しているのは、利便性とセキュリティ、そしてコストのバランスです。自分の利用シーンにおいて、固定IPがもたらすメリットがデメリットを上回るかどうかを冷静に判断することが、最適なVPN環境を構築する鍵となります。





