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なぜ『SoftEther VPN』は禁止?深刻なリスクを徹底解説

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SoftEther VPNは、その卓越した柔軟性と強力なファイアウォール貫通能力で、世界中のユーザーから支持を集めるVPNソフトウェアです。しかし、その強力な機能性ゆえに、多くの企業や大学、さらには国家レベルで「禁止」の対象となっている事実があります。なぜ、セキュリティを高めるはずのVPNが、これほどまでに警戒されるのでしょうか。

私が長年ネットワーク技術に携わってきた経験から言えることは、SoftEther VPNの技術はその設計思想そのものに「諸刃の剣」としての性質を内包しているということです。この記事では、SoftEther VPNがなぜ禁止されるのか、その背景にある深刻なリスクを、技術的な仕組みから組織や国家の論理まで、徹底的に掘り下げて解説します。

タップできる目次

SoftEther VPNが持つ「諸刃の剣」|その強力な技術の正体

SoftEther VPNが他のVPNと一線を画すのは、そのユニークなアーキテクチャと、あらゆるネットワークの壁を突破するために設計された高度な回避技術にあります。この技術こそが、利便性の源泉であり、同時にリスクの根源でもあります。

ネットワークをソフトウェアで再現する仮想化技術

SoftEther VPNの核心は、物理的なネットワーク機器の機能をすべてソフトウェアでエミュレートする「仮想化」にあります。これにより、驚異的な柔軟性が生まれます。

  • 仮想HUB|これはソフトウェアでできたネットワークスイッチです。地理的に離れた場所にある複数のコンピュータを、まるで同じ部屋のLANに接続されているかのように、仮想的な1つのネットワークにまとめ上げます。
  • 仮想ネットワークアダプタ|ユーザーのコンピュータ側では、この仮想アダプタがソフトウェアのネットワークカードとして動作します。OSはこれを本物のネットワークカードとして認識するため、特別な設定なしで既存のアプリケーションがそのままVPN上で使えます。

この仕組みにより、SoftEtherはネットワークの物理的な制約を超えて、異なる拠点を完全に1つのLANとして統合できます。これは非常に強力な機能ですが、裏を返せば、管理されていないネットワークを、企業の管理されたネットワークへ無断で接続できてしまうことを意味します。

あらゆる壁をすり抜けるファイアウォール貫通能力

SoftEther VPNが「禁止」される最大の理由の一つが、この驚異的なファイアウォール貫通能力です。これは、インターネットの基本的な仕組みを巧みに利用することで実現されています。

Ethernet over HTTPS|ウェブサイト閲覧への偽装

SoftEther VPNの通信は、標準でTCPポート443を使用します。このポートは、HTTPS通信、つまりクレジットカード情報などをやり取りする安全なウェブサイトの閲覧で使われる、インターネットに不可欠なポートです。SoftEtherはVPNの全データをこのHTTPS通信に見せかけてカプセル化します。ファイアウォール側から見ると、ユーザーが安全なウェブサイトを見ているようにしか見えないため、ブロックすることが極めて困難になります。

VPN over DNS/ICMP|インターネットの根幹プロトコルの利用

さらに強力な手段として、SoftEtherはVPNの通信をDNSクエリやICMPパケット(pingで使われるパケット)に偽装する機能まで備えています。DNSやICMPは、インターネットが機能するための根幹をなすプロトコルです。これらを全面的にブロックすれば、インターネットそのものが使えなくなってしまいます。そのため、どんなに厳しいネットワークでも、この手法を使えば通信を確立できる場合が多いのです。

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なぜ組織はSoftEther VPNを禁止するのか|管理者の視点

個人ユーザーにとっては便利なSoftEther VPNですが、企業や大学などの組織のネットワーク管理者から見れば、その存在は悪夢以外の何物でもありません。私がネットワーク管理者であれば、組織の秩序と安全を守るために、その利用を厳しく禁止するでしょう。

セキュリティシステムを無力化する「死角」

組織がSoftEther VPNを禁止する根源的な理由は、それが組織のセキュリティポリシーを根底から覆し、管理者の制御を完全に無効化するからです。ユーザーがSoftEther VPNを使えば、組織が多額の投資をして構築したセキュリティシステムがバイパスされてしまいます。

  • ファイアウォールの迂回|ウェブサイトの閲覧制限や危険なサイトへのアクセスブロックが無意味になります。
  • 監視システムの無効化|HTTPSで暗号化されたトンネルの内部を、侵入検知システム(IDS)やプロキシサーバーは検査できません。これはセキュリティチームにとって巨大な「死角」となり、マルウェアの侵入や機密情報の持ち出しを検知できなくなります。

まさに、管理されたネットワークの中に、誰も管理できないブラックボックスが生まれることに等しいのです。

ネットワークの安定性を脅かす深刻なリスク

セキュリティポリシー違反に加えて、SoftEther VPNはネットワークの安定性そのものに対する直接的な脅威をもたらします。

不正なブリッジ接続

ユーザーが自宅のネットワークと会社のLANをSoftEtherのブリッジ機能で接続した場合、それは企業のセキュリティ境界に管理外の穴を開ける行為です。セキュリティパッチが未適用の個人のPCや、マルウェアに感染したIoT機器が、何のチェックもなく社内ネットワークに直接侵入する道筋を作ってしまいます。

ローグサービスの脅威

悪意のあるユーザーがVPNセッション内で偽のDHCPサーバーなどを稼働させると、他のユーザーの通信を妨害し、ネットワーク全体を混乱させることもできます。これは、組織にとって許容できないリスクです。

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国家がVPNをブロックする理由|中国「グレートファイアウォール」の事例

組織レベルの禁止が「秩序の維持」を目的とするのに対し、中国に代表される国家レベルの禁止は、「情報統制」という、より政治的な目的を持っています。これは単なる技術的なブロックではなく、法律と技術が一体となった体系的な取り組みです。

法律で定められた「非合法的VPN」

中国では、2017年に施行された「サイバーセキュリティ法」により、政府の承認を得ていないVPNの利用が明確に禁止されています。これは、国境を越える全てのデータ通信を国家の管理下に置くという、サイバー主権の確立を目指すものです。

VPNの種類特徴
合法的VPN政府からライセンスを受けた国営通信事業者が提供するVPN。外資企業などが業務で利用するが、当局の要請に応じたデータ提出や監視のリスクが指摘されている。
非合法的VPN上記以外の海外事業者が提供するVPNや、個人が構築したSoftEtherサーバーなど。利用者は罰金の対象となり、実際に処罰された事例も複数報告されている。

中国の戦略は、VPNを根絶するのではなく、国家が管理できる「合法的VPN」に限定することで、経済活動への影響を抑えつつ、情報の流れを完全にコントロールすることにあります。

技術で封じ込める終わらない競争

法的規制と並行して、中国は「グレートファイアウォール(GFW)」と呼ばれる世界で最も高度な検閲システムで、非合法的VPNの技術的な封じ込めを行っています。GFWは、ディープ・パケット・インスペクション(DPI)という技術を駆使します。

DPIは、通信パケットの中身まで詳細に分析し、それがどのような通信かを特定する技術です。たとえSoftEtherがHTTPS通信に偽装していても、DPIはその通信のパターンや振る舞いから、特有の「指紋(シグネチャ)」を検出します。これにより、「これはウェブサイトの閲覧ではなく、SoftEther VPNの通信だ」と識別し、ブロックすることができるのです。この検出技術の進化は、検閲側と回避側の間で繰り広げられる、終わりのない技術的な軍拡競争を生み出しています。

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SoftEther VPNに潜む見過ごせない脆弱性

SoftEther VPNの利用を検討する上で、その強力な機能だけでなく、ソフトウェア自体や関連プロジェクトに潜むリスクも正しく理解しておく必要があります。特に、多くの人が利用する「VPN Gate」には重大な落とし穴があります。

ソフトウェア自体のセキュリティホール

SoftEther VPNはオープンソースソフトウェアですが、無謬ではありません。過去には、サービス妨害(DoS)攻撃や中間者攻撃につながる可能性のある脆弱性が複数発見され、修正されています。

発見された脆弱性の例(CVE)

  • CVE-2023-27395|ヒープオーバーフローによるサービス妨害のリスク
  • CVE-2023-32634|中間者攻撃(通信の盗聴・改ざん)の可能性

これらの脆弱性の存在は、たとえ自分でサーバーを運用する場合でも、常に最新のバージョンにアップデートし続けるという、管理責任が伴うことを示しています。

「VPN Gate」利用に伴うプライバシーのリスク

私が最も警鐘を鳴らしたいのは、SoftEther VPNの学術実験プロジェクトである「VPN Gate」の安易な利用です。多くの人が「無料で使える便利なVPN」と認識していますが、その実態はプライバシーの観点から極めてハイリスクです。

リスク要因VPN Gateの実態
サーバー運営者世界中の匿名のボランティア。サーバーが悪意のある第三者によって運営されている可能性を排除できない。
ロギングポリシーログを積極的に記録する方針。 接続日時、元のIPアドレス、アクセス先の情報などが記録され、法執行機関に開示される。プライバシー保護ツールではない。
キルスイッチ機能非搭載。 VPN接続が不意に切れた際、暗号化されていない通信や本当のIPアドレスが即座に漏洩する危険がある。
信頼性ボランティア運営のため、サーバーの安定性やセキュリティパッチの適用は保証されない。

SoftEther VPNという「ツール」そのものと、VPN Gateという「不特定多数が運営する高リスクなネットワーク」は、全くの別物です。プライバシーを守る目的でVPN Gateを使うことは、金庫の鍵を他人に預けるような行為に等しいと断言します。

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【立場別】SoftEther VPNとの正しい向き合い方

これまで見てきたように、SoftEther VPNのリスクと価値は、利用者の立場や目的によって大きく変わります。ここでは、それぞれの立場からどう向き合うべきかを提言します。

個人ユーザー|目的を明確にする

個人が利用する場合、何を最優先するかで選択は変わります。

  • 検閲回避が目的の場合|VPN Gateは情報にアクセスする一つの手段ですが、通信内容のプライバシーは保護されないことを覚悟する必要があります。
  • プライバシー保護が目的の場合|VPN Gateの利用は絶対に避けるべきです。信頼できる有料VPNサービスを利用するか、自己責任でSoftEtherサーバーをプライバシー保護法が強力な国に設置し、適切に管理する必要があります。

企業・組織の管理者|多層防御でブロックする

組織のネットワークを守るためには、SoftEther VPNのような回避ツールを徹底的にブロックする多層的な防御戦略が不可欠です。

  • DPI搭載ファイアウォールの導入|アプリケーションを識別し、SoftEtherの通信シグネチャを検出・ブロックする。
  • 振る舞い検知|長時間続く大容量の暗号化通信など、VPN特有の振る舞いを異常として検知する。
  • DNSフィルタリング|SoftEtherのDDNSドメインへのアクセスをブロックする。

ポートを塞ぐだけの単純な対策では、もはやSoftEtherは防げません。

規制下の国にいるユーザー|最大限の注意を払う

中国のような規制国家で利用を検討する場合は、その行為が深刻なリスクを伴うことを認識しなければなりません。

  • 法的リスクの認識|非承認VPNの利用は法律違反であり、罰金やそれ以上の処罰を受ける現実的なリスクがあります。
  • 技術的リスクへの対策|国家レベルのDPIに対抗するためには、SoftEtherの通信をさらに別のツールでカプセル化する「難読化」といった、高度な技術的自衛策が必要になる場合があります。

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まとめ

SoftEther VPNは、間違いなく技術的に非常に優れた革新的なソフトウェアです。その仮想化技術とファイアウォール貫通能力は、ネットワークの常識を覆すほどの力を持っています。

しかし、その強すぎる力は、管理されたネットワークの秩序を破壊し、国家の情報統制に対する直接的な挑戦となります。これが、企業や国家がSoftEther VPNを「禁止」する理由の核心です。セキュリティシステムを無力化するリスク、ネットワークを不安定にする危険性、そしてソフトウェアや関連プロジェクトに内在する脆弱性は、決して無視できません。

特に、無料だからという理由で安易に「VPN Gate」に接続することは、自らのプライバシーを危険に晒す行為です。SoftEther VPNを利用する際は、自分がどのような立場で、何を目的とし、どのようなリスクを許容できるのかを冷静に判断することが、何よりも重要です。その強力な力を正しく理解し、賢く付き合っていく必要があります。

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