台湾のインターネット環境は「自由」というイメージが強いです。しかし、台湾旅行や長期滞在を計画している方から、VPNは本当に必要なのかという質問をよく受けます。
結論から言えば、台湾でのインターネット利用においてもVPNの重要性は高まっています。私が調べたところ、2024年に台湾の法律が変わり、ネットの状況が少し複雑になったからです。この記事では、台湾の最新のVPN事情と規制の現状、そして安全なVPNの選び方を詳しく解説します。
「VPNって何?」という方は以下の記事を参照してください。図解を使って初心者にもわかりやすく解説しています。
台湾でVPNは必要なのか?|規制の現状を解説

台湾でのインターネット利用は、中国本土(PRC)とは全く異なります。しかし、知っておくべき変化が起きています。
結論|台湾でのVPN使用は「合法」です
台湾において、個人や企業がVPN(仮想プライベートネットワーク)を利用することは完全に合法です。プライバシー保護、セキュリティ強化、または地理的に制限されたコンテンツへのアクセス(ジオブロック回避)のためにVPNを使っても、法律で罰せられることはありません。
中国(PRC)との大きな違い
中国本土では、政府が承認していないVPNの使用は厳しく制限されています。これは「グレート・ファイアウォール(GFW)」と呼ばれる強力なネット検閲システムによるものです。
台湾にはこのような政治的な検閲システムは存在しません。台湾は民主的な社会であり、インターネットの自由度はアジアでもトップクラスです。この点が、中国本土との決定的な違いです。
VPN利用の主な目的|日本のサービス利用とセキュリティ
台湾でVPNが使われる主な理由は、政治的な検閲回避ではありません。多くの場合は、セキュリティの確保や、日本国内限定のサービス利用が目的です。
例えば、フリーWi-Fi(夜市やカフェなど)利用時の通信傍受を防ぐセキュリティ対策としてVPNは役立ちます。私がよく使うのは、台湾から日本のストリーミングサービス(U-NextやAbemaなど)を視聴する時です。
注意点|2024年法改正で監視と規制が強化
ここが重要なポイントです。台湾では2024年に「詐欺対策」を目的とした新しい法律が施行されました。これにより、政府によるウェブサイトのブロッキングや通信監視の権限が強化されています。
「詐欺対策」名目でのウェブサイトブロック(DNS RPZ)
台湾政府は、詐欺サイトや犯罪に関連するサイトをブロックするために「DNS RPZ」という技術を導入しています。これは「DNSファイアウォール」とも呼ばれ、特定のウェブサイトへのアクセスをDNSレベルで遮断する仕組みです。
問題は、このブロッキングが司法の審査を経ずに「緊急要請」として大量に行われている実態があることです。政府の判断で、詐欺とは関係のないサイトまでブロックされてしまう「巻き添えブロック」のリスクが指摘されています。
通信の「メタデータ」監視(CSSA改正)
同時に「通信保障監察法(CSSA)」も改正されました。これにより、当局は裁判所の事前の令状なしに「ネットワークトラフィック記録」いわゆるメタデータにアクセスしやすくなりました。
メタデータとは、通信の内容そのものではなく、「誰が、いつ、どこから、どのサイトに接続したか」という活動記録です。あなたのプライバシーに関わる情報が、以前よりも簡単に収集される環境になったと言えます。
台湾のネット規制でVPNが役立つ理由

こうした台湾の新しいネット環境において、信頼できるVPNはユーザーを守る強力な盾となります。
強化された「監視」からプライバシーを守る
CSSA改正によって、あなたのISP(インターネットサービスプロバイダ)は、あなたのメタデータを当局に提供する義務を負う場合があります。
VPNが通信を暗号化する仕組み
VPNを使用すると、あなたの全てのインターネット通信は暗号化された「トンネル」を経由します。通信データは、あなたとVPNサーバーの間で完全に暗号化されます。
ISP(プロバイダ)からの監視を回避
あなたがVPNを使っていると、ISPには「あなたがVPNサーバーに接続している」ことしか分かりません。どのサイトを閲覧し、どんなサービスを利用したかという具体的なメタデータは、暗号化によって隠されます。
「DNS RPZ」によるサイトブロックを回避する
台湾政府が進めるDNS RPZによるブロッキングは、特定のDNSサーバーで実行されます。VPNを使えば、このブロックを簡単に回避できます。
DNS RPZとは何か?
DNS RPZは、ISPが提供するDNSサーバーが「このサイトは危険だ」と判断すると、偽の応答を返してアクセスできなくする技術です。技術に詳しい人ならDNS設定を変更すれば回避できますが、少し面倒です。
VPNを使えばブロックを簡単に回避できる
VPNサービスは、通常、独自の暗号化されたDNSサーバーを提供しています。VPNに接続するだけで、台湾のISPが管理するDNSサーバーを自動的にバイパスします。
結果として、DNS RPZによるブロッキングの影響を一切受けることなく、自由にインターネットを閲覧できます。
日本の動画サービスを台湾から視聴する
これは台湾在住者や旅行者にとって、VPNを利用する大きな動機の一つです。
U-NextやAbemaは海外から見られない
日本の多くのストリーミングサービス(U-Next、Abema、TVer、Huluなど)は、著作権(放映権)の関係で、日本国内からのアクセスしか許可していません。台湾からアクセスすると「お住まいの地域からは視聴できません」と表示されます。
VPNで日本のサーバーに接続する
VPNを使って日本のサーバーに接続すれば、あなたのデバイスは「日本国内からアクセスしている」と認識されます。これにより、台湾にいながら日本のテレビ番組や映画を自由に楽しむことができます。
台湾で使うVPNサービスの選び方とおすすめ

台湾でVPNを選ぶ際、私がVPNを選ぶ際に最も重視するのは、プライバシーポリシーと通信品質の2点です。
- 厳格な「ノーログポリシー」
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これが最も重要です。「ノーログポリシー」とは、ユーザーの活動記録(閲覧履歴や接続メタデータ)を一切保存しないという約束です。
台湾のCSSA改正(メタデータ監視)を回避するためにVPNを使うのですから、そのVPNサービス自体があなたのログを記録していては本末転倒です。信頼できる有料VPNサービスは、このノーログポリシーを掲げ、第三者機関による監査を受けています。
- 通信速度とサーバー品質
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VPNを経由すると、通信は必ず少し遅くなります。しかし、高品質なVPNサービスは技術投資を行っており、動画視聴やオンラインゲームにも耐えられる高速な通信を維持しています。
これらの基準を満たす、おすすめのVPNサービスを紹介します。
ExpressVPN
NordVPN
CyberGhost
Surfshark
セカイVPN
まとめ

台湾のインターネット環境は、中国本土と比べて非常に自由です。VPNの利用も合法であり、規制されていません。
しかし、「詐欺対策」を名目とした2024年の法改正により、政府によるウェブサイトのブロッキング(DNS RPZ)や、ユーザーの通信監視(メタデータ収集)が強化されたという事実は知っておくべきです。
台湾旅行や在住中、フリーWi-Fiを安全に使いたい、プライバシーを守りたい、あるいは日本の動画サービスを楽しみたいと考えるなら、信頼できる「ノーログ」の有料VPNは必須のツールと言えます。






