「信頼の日本製VPN」として宣伝されているMillenVPN。その安全性や信頼性について、疑問を持ったことはありませんか。多くのVPNサービスがプライバシー保護を最重要視する中で、MillenVPNは本当に安全な選択肢なのでしょうか。
私がVPNサービスを評価する上で最も重視するのは、運営の透明性と、ユーザーのプライバシーをどれだけ厳格に守っているかという点です。この記事では、MillenVPNが抱える潜在的な「危険性」について、公表されている情報を基に徹底的に深掘りします。

MillenVPNが抱える「危険性」の正体

MillenVPNは、一見すると安全な日本製VPNに見えます。しかし、公表されている情報を詳細に分析すると、いくつかの重大な懸念点が浮かび上がります。
危険性1|ノーログポリシーの「矛盾」
MillenVPNは日本語サイトで「ノーログVPNサービスプロバイダー」であると明記しています。これは、通信内容や閲覧履歴を記録しないという意味です。
しかし、法的に拘束力を持つ英語版のプライバシーポリシー原文には、異なる記載が存在します。ここが最大の問題点です。
専用アプリと「Native」接続の違い
MillenVPNには、専用アプリ経由の接続と、OS標準機能などを使う「MillenVPN Native」という接続方法があります。
英語版ポリシーによれば、専用アプリでは接続元IPアドレスやタイムスタンプを「収集しない」とされています。一方で、「MillenVPN Native」では、これらの情報を「収集する」と明確に記載されているのです。
なぜ「Native」接続は危険なのか
「接続元IPアドレスとタイムスタンプ」は、個人を特定するために最も重要な情報です。これを収集されるということは、匿名性が失われることを意味します。
サービスの不具合や、中国のような規制が厳しい国からの接続対策として「Native」接続が案内されるケースがあります。プライバシーを求めているはずが、最も危険な(ログが記録される)接続方法へ誘導される可能性がある点は、深刻な「プライバシー・トラップ」と言えます。
危険性2|「日本製」が招く法的脆弱性
MillenVPNは「信頼の日本企業」であり「日本の法律に準拠」していることを強みとしています。これがユーザーに安心感を与えています。
しかし、プライバシー保護の観点では、これが逆に「脆弱性」となります。運営会社のアズポケット株式会社は日本法人であるため、日本の法執行機関や裁判所から情報開示命令が出た場合、それを拒否することは困難です。
法的盾と技術的盾とは
海外の有力VPNプロバイダー(例えばNordVPNやExpressVPN)は、パナマや英領ヴァージン諸島など、他国の法執行が及びにくい国に拠点を置いています。これを「法的盾」と呼びます。
MillenVPNにはこの「法的盾」がありません。この場合、唯一の防御策は「開示すべきログを一切保持しない」という「技術的盾」だけです。しかし、前述の通り「Native」接続ではログを収集しているため、この「技術的盾」も不完全です。
危険性3|第三者監査の完全な欠如
現代の信頼できるVPNプロバイダーにとって、独立した第三者機関による監査は「業界標準」です。
ProtonVPN、Mullvad、NordVPNといった主要サービスは、定期的に監査を受け、ノーログポリシーやセキュリティ体制が本物であることを証明しています。私がサービスを選定する際も、この監査の有無を非常に重視します。
2025年現在、MillenVPNがこのような独立監査を受けたという証拠は一切ありません。ノーログやセキュリティに関する主張は、すべて「自己申告」に過ぎない状態です。
MillenVPNのメリット・デメリット徹底比較

MillenVPNは危険性だけではありません。もちろんメリットも存在します。ここでは、両方の側面を公平に比較検討します。
MillenVPNを利用するメリット
MillenVPNが多くの日本人ユーザーに選ばれるのには、明確な理由があります。
海外から日本のVODを視聴できる
MillenVPNの最大の強みは、日本の動画配信サービス(VOD)への対応力です。
海外からは通常視聴できないTVer、U-NEXT、Hulu(日本版)などを、高い確率で視聴できます。これは、海外在住の日本人にとって非常に大きなメリットです。
充実した日本語サポートと手頃な価格
完全な日本語対応は、国内企業ならではの強みです。サポートへの問い合わせも日本語でスムーズに行えます。
料金も、他の大手VPNサービスと比較して安価な水準に設定されています。初めてVPNを使う人にとって、導入のハードルが低いと言えます。
MillenVPNを利用するデメリット(危険性)
一方で、これまで指摘してきた危険性がそのままデメリットとなります。
接続ログ(IP・タイムスタンプ)の記録
最大のデメリットは、プライバシーポリシーの矛盾です。「MillenVPN Native」利用時に接続ログが収集されるリスクは、看過できません。
万が一、自分がログを記録される「Native」接続を(知らずに)使っていた場合、匿名性は一切保証されないと考えるべきです。
通信速度や安定性の問題
レビューでは「通信スピードがやや遅い」「接続が不安定になる」といったパフォーマンスに関する指摘も見られます。
この運用上の問題が、結果としてログを記録される「Native」接続の使用へとユーザーを誘導する引き金になっている可能性も否定できません。
MillenVPNはどんな人におすすめか?

MillenVPNが抱えるリスクとメリットを踏まえ、どのような人に推奨でき、どのような人には推奨できないかを明確にします。
MillenVPNの利用を推奨しないケース
以下の目的でVPNを利用する場合、私はMillenVPNの利用を絶対に推奨しません。
- P2P(トレント)利用者P2P通信は公式に許可されています。しかし、ログが記録されている可能性と、日本の管轄権(開示請求に脆弱)という組み合わせは、法的な「罠」になり得ます。開示請求が行われた場合、ユーザーを保護する術がありません。
- 絶対的なプライバシーを求める人ジャーナリスト、活動家、あるいは単に最高レベルの匿名性を求める人には不向きです。ノーログポリシーが監査されておらず、ログ収集の懸念があるため危険です。
- 中国など高リスク国からの利用者アプリが不安定で、その「解決策」としてログが記録される「Native」接続を推奨されるリスクがあります。これは非常に危険な選択です。
MillenVPNを安全に利用できるケース
一方で、以下のような限定的な目的であれば、MillenVPNは安全かつ便利な選択肢となります。
- 海外から日本のVODを視聴したい人これがMillenVPNの核となるユースケースです。プライバシーリスクの低いVOD視聴が主目的であれば、MillenVPNのメリットを最大限に享受できます。
- 日本のフリーWi-Fiの安全対策カフェや空港のフリーWi-Fiを利用する際の通信を暗号化する目的。この場合も、利便性がリスクを上回ります。
ただし、これらの「安全な利用」には大前提があります。それは、「MillenVPN Native」や「OpenConnect」を絶対に使用せず、必ず「専用アプリ」版のみを利用することです。
まとめ|MillenVPNは利用目的に合えば安全なVPN

MillenVPNは、「信頼の日本製」という言葉の裏に、ノーログポリシーの矛盾、法的脆弱性、第三者監査の欠如という重大な「危険性」を抱えています。
P2P(トレント)や絶対的な匿名性を求める用途には、極めて危険であり推奨しません。
しかし、もしあなたの目的が「海外から日本のTVerやU-NEXTを視聴する」といった低リスクなVODのジオブロック解除に限定されるのであれば十分安全です。専用アプリのみを使用するというルールを守れば、MillenVPNは安価で日本語サポートも充実した、便利なVPNサービスとなります。


