カスペルスキーは、ウイルス対策ソフトとして世界的に高い評価を受けている製品です。私も長年、その検出率の高さや動作の軽さには注目してきました。しかし、近年、その「危険性」を指摘する声が大きくなっています。
特に米国政府がカスペルスキー製品の販売を禁止するという、非常に厳しい措置に踏み切りました。これを受けて、「日本でも禁止されるのでは?」という噂が広がり、多くのユーザーが不安を感じています。この記事では、カスペルスキーに今何が起きているのか、その危険性の実態と、日本での影響について詳しく解説します。
カスペルスキーを巡る「危険性」の正体
カスペルスキーの「危険性」が広く知られるようになった最大の要因は、米国政府の決定にあります。これは単なる噂ではなく、国家安全保障レベルでの判断が下された結果です。
米国政府による厳しい販売禁止措置
2024年6月、米国商務省は、米国内におけるカスペルスキー製品のすべての販売を禁止する措置を発表しました。これは非常に重い決定です。
この措置により、米国のユーザーは2024年9月29日をもって、ソフトウェアのアップデートを受け取れなくなりました。セキュリティソフトにとって、アップデートの停止は致命的です。
なぜ禁止されたか|地政学的リスクという背景
米国政府が禁止に踏み切った理由は、カスペルスキーがモスクワに拠点を置く企業であることに起因します。
ロシア政府がカスペルスキーのソフトウェアが持つ特権的なシステムアクセス権限を利用し、ユーザーデータの提供を強制したり、サイバー攻撃を行ったりする可能性があると懸念されています。これは、製品の性能ではなく、地政学的なリスクを根拠とした措置です。
具体的に何が問題視されているのか
米国政府の措置は、カスペルスキーが抱える二つの大きな問題点を浮き彫りにしました。一つは製品の継続性、もう一つはプライバシーに関する懸念です。
ソフトウェア更新停止という最大のリスク
前述の通り、セキュリティソフトは日々生まれる新しい脅威に対応するため、定義ファイルの更新が不可欠です。
米国の禁止措置によりアップデートが停止すると、そのソフトウェアは新たな脆弱性に対して全くの無防備となります。これは、セキュリティ製品を使い続けること自体がリスクになるという、本末転倒な事態を意味します。
VPN機能のプライバシー(ロギング)に関する懸念
カスペルスキーは、総合セキュリティソフトの一部としてVPN機能も提供しています。このVPNサービスについても、プライバシー保護の観点から疑問が呈されています。
カスペルスキーVPNは、実質的に米国拠点であるPango社のインフラを利用しています。カスペルスキー自身は「ノーログ(活動記録を保存しない)」と主張していますが、インフラパートナーであるPangoのプライバシーポリシーでは、IPアドレスやセッションデータなど、一定のデータを収集する内容が記載されています。この「ノーログ」という主張と実態の乖離が、プライバシーを重視するユーザーからの信頼を損ねる一因となっています。
日本での影響と「やめるべきか」という疑問
米国での厳しい措置を受け、日本国内のユーザーが「自分も今すぐやめるべきか」と不安になるのは当然です。しかし、日本における状況は米国とは異なります。
日本国内でのカスペルスキーの立ち位置
米国や一部の欧州諸国とは異なり、日本では現時点で政府レベルでのカスペルスキー製品の使用を禁止する措置は取られていません。
日本法人は東京に拠点を置き、国内市場向けの販売とサポートを継続しています。もちろん、ソフトウェアのアップデートも問題なく提供されています。
私が日本でカスペルスキーを使い続ける理由
結論から言えば、私は日本国内での使用において、現時点でカスペルスキーを「今すぐやめる」必要はないと考えています。
最大の理由は、中核機能であるウイルス対策の「性能」が、依然として世界トップレベルであることです。AV-TESTのような独立した第三者評価機関のテストでも、カスペルスキーは常に最高水準の検出率やパフォーマンスを記録しています。これは客観的な事実です。
米国での禁止措置は、あくまで「地政学的リスク」を理由としたものであり、製品の技術的な欠陥を直接指摘したものではありません。日本国内で正規に提供され、アップデートが保証されている限り、その優れた防御性能を享受するメリットは大きいと判断しています。
まとめ
カスペルスキーを巡る問題は、米国政府による「地政学的リスク」を理由とした禁止措置が発端です。これにより、米国のユーザーはアップデート停止という深刻な事態に直面しました。
しかし、日本国内においては政府による禁止措置はなく、製品の販売もサポートも正常に継続されています。VPN機能のロギングポリシーには確かに懸念点が残るものの、ウイルス対策ソフトとしての中核性能は、依然として業界最高水準です。
私が重視するのは、日々直面するサイバー脅威から確実にPCを守ってくれる「防御性能」です。日本でアップデートが提供され続ける限り、私はカスペルスキーの技術力を信頼します。



