Raspberry Pi(ラズベリーパイ)は、小型で安価なシングルボードコンピュータです。教育用途やDIYプロジェクト、サーバー運用など、さまざまな場面で活用されています。
初心者でも手軽に扱うことができるため、プログラミングの学習や電子工作の入門にも最適です。
本記事では、Raspberry Piの活用方法について詳しく解説します。

Raspberry Piの基本仕様と特徴

Raspberry Piはモデルによって性能や機能が異なりますが、共通して以下の特徴を持っています。
小型で低価格
Raspberry Piは手のひらサイズで、低コストで購入できる点が魅力です。エントリーモデルの「Raspberry Pi Zero」は特に安価で、軽量なプロジェクトに適しています。
豊富な接続オプション
以下のような接続端子を備えており、さまざまな用途に活用できます。
- USBポート(キーボードやマウス接続用)
- HDMI出力(モニター接続用)
- GPIOピン(電子工作やセンサー接続用)
- Wi-Fi・Bluetooth(無線通信対応モデルもあり)
LinuxベースのOSを搭載
Raspberry Pi OS(旧Raspbian)をはじめとするLinuxディストリビューションが利用可能です。これにより、サーバー運用や開発環境の構築が容易に行えます。
Raspberry Piのメリット・デメリット
Raspberry Piには多くの利点がありますが、デメリットもあります。
メリット
- 低コストで入手可能(初心者でも気軽に始められる)
- 省電力で24時間稼働が可能(サーバー運用に適している)
- Linux環境で開発できる(プログラミング学習に最適)
- 拡張性が高い(電子工作やIoTプロジェクトに活用可能)
デメリット
- 性能がPCほど高くない(複雑な処理や動画編集には不向き)
- ストレージがmicroSDカード依存(寿命が短くなる可能性がある)
- 専用電源が必要(不安定な電力供給では動作が不安定になる)
Raspberry Piの初心者向け活用方法

Raspberry Piは多用途に利用できますが、特に初心者向けの活用例を紹介します。
プログラミング学習
Raspberry Piは、PythonやScratchなどのプログラミング言語を学ぶのに最適な環境を提供します。初心者でも手軽に学べるため、教育機関でも活用されています。
メディアセンターの構築
Raspberry PiにKodiをインストールすれば、家庭用メディアセンターを作成できます。映画や音楽をストリーミング再生したり、YouTubeを視聴したりすることも可能です。
自宅サーバーの運用
小型のLinuxサーバーとして運用することもできます。以下のような用途があります。
- ファイルサーバー(NAS)
- Webサーバー(WordPressや静的サイトのホスティング)
- VPNサーバー(セキュアなリモートアクセス用)
IoTデバイスの開発
GPIOピンを活用すれば、センサーやアクチュエーターを接続してIoTプロジェクトを構築できます。例えば、温度センサーを使った環境モニタリングやスマートホーム制御などが可能です。
Raspberry Piの導入手順

初心者がRaspberry Piを使い始めるための基本的な手順を解説します。
1. 必要なものを準備
Raspberry Piを使用するには、以下のものが必要です。
項目 | 説明 |
---|---|
Raspberry Pi本体 | モデルによって性能が異なる |
microSDカード | OSインストール用(最低16GB推奨) |
電源アダプター | 安定した電力供給のため純正品推奨 |
HDMIケーブル | モニター接続用 |
キーボード・マウス | 操作用(SSH接続なら不要) |
2. OSのインストール
Raspberry Pi OSをインストールするには、Raspberry Pi Imagerという公式ツールを使用すると簡単です。以下の手順でセットアップできます。
- Raspberry Pi Imagerをダウンロード・インストール
- microSDカードをPCに接続し、OSを書き込む
- Raspberry PiにmicroSDカードを挿入し、起動
3. 初期設定
初回起動時に以下の設定を行います。
- 言語とキーボードレイアウトの選択
- Wi-Fi接続(無線対応モデルのみ)
- OSのアップデート
設定が完了すれば、すぐに使用できます。
歴代Raspberry Piのモデル

Raspberry Piは2012年の初代モデル発売以来、さまざまなモデルが登場し、進化を続けてきました。
ここでは、特に人気のある主要モデルについて詳しく解説します。各モデルの特徴や用途を理解し、自分のプロジェクトに最適なRaspberry Piを選びましょう。
Raspberry Pi Zero W
発売日:2017年2月28日
価格:約1,500円〜3,000円(市場価格)
主な特徴:
- 超小型(65mm × 30mm × 5mm)
- シングルコアCPU(1GHz ARM11)
- Wi-Fi(802.11 b/g/n)とBluetooth 4.1搭載
- 512MB RAM
- Mini HDMIポート、Micro USBポート(電源 & OTG)
- 40ピンGPIO(ヘッダーピンなし)
用途・活用例:
- IoTデバイスの開発(スマートホーム、温湿度管理など)
- ウェアラブルデバイス(小型端末への組み込み)
- ロボット開発(軽量ボードのためドローンなどにも適用可能)
- ポータブルゲーム機(エミュレーターを搭載し、レトロゲーム機を作成)
Raspberry Pi Zero Wは、そのコンパクトさと低消費電力により、組み込み用途やモバイルプロジェクトに適しています。ただし、性能が控えめなため、デスクトップ用途には向いていません。
Raspberry Pi Zero 2 W
発売日:2021年10月28日
価格:約2,500円〜4,000円(市場価格)
主な特徴:
- 1GHz クアッドコア ARM Cortex-A53搭載(Zero Wの約5倍の性能)
- 512MB RAM
- Wi-Fi(802.11 b/g/n) & Bluetooth 4.2
- Mini HDMI、Micro USB(OTG & 電源)
- HAT互換の40ピンGPIO
用途・活用例:
- 小型サーバー構築(Webサーバー、DNSサーバーなど)
- レトロゲームエミュレーター(RetroPieでスムーズなゲーム体験)
- 自動化システム(スマート家電の制御、監視カメラなど)
- ポータブルデバイス(携帯型ストリーミング機器、ウェアラブル技術)
Zero Wの最大の弱点であったシングルコアCPUを克服し、Zero 2 Wではクアッドコアを搭載することで、大幅な性能向上を実現しました。これにより、より高度な処理が可能となり、小型デバイス用途が広がりました。

Raspberry Pi 3
発売日:2016年2月29日
価格:約4,000円〜7,000円(市場価格)
主な特徴:
- 1.2GHz クアッドコア ARM Cortex-A53搭載
- 1GB RAM
- Wi-Fi(802.11 b/g/n) & Bluetooth 4.1
- 4つのUSB 2.0ポート
- フルサイズHDMIポート
- イーサネットポート搭載
用途・活用例:
- プログラミング学習(Python、Scratch、C++など)
- デスクトップPCとしての利用(軽量OSなら快適に動作)
- スマートホームの制御(Node-RED、Home Assistantを活用)
- マルチメディアプレイヤー(KodiやPlexで動画ストリーミング)
Raspberry Pi 3は、初めてWi-FiとBluetoothを標準搭載したモデルであり、ネットワーク接続が格段に便利になりました。現在ではRaspberry Pi 4や5の登場によりやや古くなっていますが、軽量な用途では今でも十分に活用できます。

Raspberry Pi 4
発売日:2019年6月24日
価格:約6,000円〜15,000円(RAM容量による)
主な特徴:
- 最大8GB RAM搭載(1GB / 2GB / 4GB / 8GBモデルあり)
- 1.5GHz クアッドコア ARM Cortex-A72搭載(前世代比約3倍の性能)
- USB 3.0ポート(×2)、USB 2.0ポート(×2)
- ギガビットイーサネット対応
- デュアル4Kディスプレイ対応(micro-HDMIポート×2)
- Wi-Fi 5(802.11ac) & Bluetooth 5.0
- USB-C電源供給
用途・活用例:
- 本格的なデスクトップPCとして利用(Webブラウジング、文書作成)
- 高性能サーバー(Nextcloud、Webサーバー、VPNサーバー)
- AI・機械学習(TensorFlow LiteやOpenCVを利用)
- 高画質メディアセンター(4K HDR対応のKodiセットアップ)
Raspberry Pi 4は、従来のモデルに比べて圧倒的な性能向上を果たし、デスクトップPCやエンタープライズ用途にも耐えられる仕様になりました。特に8GB RAMモデルは、複数のアプリを並行して動作させるのに適しています。

Raspberry Pi 5
発売日:2023年10月
価格:約8,000円〜20,000円(RAM容量による)
主な特徴:
- 2.4GHz クアッドコア ARM Cortex-A76搭載(Pi 4比で2倍高速)
- 最大16GB RAM対応(4GB / 8GB / 16GBモデル)
- PCIe 2.0レーンを搭載(SSDや拡張カード利用可能)
- USB 3.0ポート(×2)、USB 2.0ポート(×2)
- デュアル4K 60Hz出力対応(micro-HDMIポート×2)
- Wi-Fi 6(802.11ax) & Bluetooth 5.2
- 改良された電源管理(USB-C PD対応)
- ハードウェアエンコーディング(H.265/HEVCサポート)
用途・活用例:
- より高速なデスクトップPC用途(Pi 4以上のパフォーマンス)
- ストレージ強化が可能なサーバー用途(PCIe対応でNVMe SSDを使用可能)
- AI・ディープラーニング(GPUを活用したモデル訓練)
- エッジコンピューティング(小型IoTサーバー、産業用途)
Raspberry Pi 5は、ついにPCIeスロットを搭載し、ストレージ拡張や高速データ転送が可能になりました。これにより、今まで以上に本格的なPCやサーバー用途に対応できるようになり、プロフェッショナルな開発環境にも適しています。


まとめ

Raspberry Piは、初心者でも簡単に扱える小型コンピュータであり、プログラミング学習・サーバー運用・IoT開発など多用途に活用可能です。
最初に必要なものを揃え、OSをインストールすればすぐに使い始められます。特に、低コストで省電力な点が魅力で、電子工作やDIYプロジェクトにも最適です。
初心者の方も、まずは簡単なプロジェクトから始めて、Raspberry Piの可能性を広げていきましょう!