MENU
空野 紫苑
Sorano Shion
・エンタメ動画好き
・24時間VPN接続してます!

【趣味・得意分野】
⇨ブログ、文章を書くのが好き!
⇨テック分野(AI、通信)が得意
2025年最新版!VPN人気ランキング

IPv6に対応!日本発のVPN技術『PacketiX VPN』の機能と利用シーン

当ページのリンクには広告が含まれています。

PacketiX VPNは、日本発の非常に強力なVPN(Virtual Private Network)ソフトウェアです。現在はオープンソースの「SoftEther VPN」プロジェクトとして世界中で知られています。この技術の起源は、開発者である登大遊氏が筑波大学在学中に開発した「SoftEther 1.0」にまで遡ります。

商用版として登場したPacketiX VPNは、データの最小単位「Packet」と大規模なインターネット相互接続ポイント「IX」を組み合わせた造語です。この記事では、PacketiX VPNの中核技術、特にIPv6への対応機能、具体的な利用シーンについて詳しく解説します。

タップできる目次

PacketiX VPNとは?

PacketiX VPNは、単なるVPNツールではなく、柔軟なネットワーク構築を現実にするためのプラットフォームです。他の多くのVPNソリューションとは根本的に異なるアーキテクチャを採用しています。

筑波大学発の強力なVPNソフトウェア

PacketiX VPNは、2005年に「SoftEther 1.0」の次世代VPNシステムとして発表されました。ゼロから開発された商用版であり、その高い技術力が評価されています。

私が注目しているのは、その後の展開です。主力製品であった「PacketiX VPN 4.0」をベースに、オープンソース・フリーウェアとして公開されたのが、現在の「SoftEther VPN」プロジェクトです。この経緯により、商用レベルの高性能なVPN技術が世界中で利用されています。

PacketiX VPNの核心技術|レイヤ2とマルチプロトコル

PacketiX VPNの最大の特徴は、イーサネット層(レイヤ2)で動作する「ソフトウェア・イーサネット」という概念に基づいている点です。多くのVPNがIP層(レイヤ3)で動作するのとは対照的です。

L2で動作するということは、上位のプロトコルを区別しないことを意味します。物理的なLANケーブルがIPv4もIPv6も、その他のプロトコルも透過的に通すように、PacketiX VPNも同様の振る舞いをします。

さらに、SoftEther VPNサーバーは、現在主流のほぼ全てのVPNプロトコルに対応しています。

  • SoftEther SSL-VPN(独自プロトコル)
  • WireGuard
  • OpenVPN
  • L2TP/IPsec
  • MS-SSTP
  • L2TPv3 / EtherIP

これにより、既存のあらゆるVPNインフラを、このサーバー1台で統合・リプレースできます。

私が考えるメリットとデメリット

PacketiX VPN(SoftEther VPN)を評価する上で、そのメリットとデメリットを明確にしておきます。

メリット

  • 圧倒的な柔軟性|L2アーキテクチャにより、IPv6を含む多様なプロトコルを透過的に扱えます。
  • プロトコル統合|単一サーバーで複数のVPNプロトコルに対応し、既存資産を有効活用できます。
  • 強力な接続性|SSL-VPN技術により、ほぼ全てのファイアウォールを貫通します。
  • 高い費用対効果|オープンソース版(SoftEther VPN)は無償で利用でき、導入事例(例|あきんどスシロー様)では計画予算の20%でシステムを実現しています。

デメリット

  • 機能の豊富さ|多機能である反面、全ての機能を使いこなすにはネットワークに関する深い知識が求められます。
  • L2ブリッジの注意点|L2接続は便利ですが、ブロードキャストがネットワーク全体に流れるため、大規模環境では適切な設計が必要です。

目次に戻る

PacketiX VPNの主要機能

PacketiX VPNは、強力な接続性とセキュリティ、管理機能を提供します。初心者にも分かりやすく、その核となる機能を解説します。

強力な暗号化と認証機能

セキュリティはVPNの根幹です。PacketiX VPNは、AES 256ビット暗号化とRSA 4096ビット鍵交換による強力な暗号化をサポートしています。

認証機能も非常に柔軟です。

  • 単純なパスワード認証
  • X.509クライアント証明書認証
  • スマートカードやセキュリティトークンによる物理デバイス認証
  • RADIUSやActive Directory(NTドメイン)との連携認証

これらにより、企業の高度なセキュリティ要件にも応えます。

SSL-VPNによるファイアウォール貫通

従来のVPNは、企業のファイアウォールによって特定のポートがブロックされ、接続できない問題がありました。PacketiX VPNは、この問題を独自の技術で解決します。

VPN通信を標準的なHTTPS(TCP 443番ポート)トラフィックに偽装する「SSL-VPN (Ethernet over HTTPS)」技術を搭載しています。これにより、厳格なファイアウォールでも、通常のWebサイト閲覧との区別が困難になり、ほぼ全てのネットワーク環境から接続できます。

VPN over ICMP / VPN over DNS

さらに制限の強いネットワーク向けに、VPNパケットをICMP (ping) やDNSクエリのパケットにカプセル化する機能も備えています。これは非常に画期的な技術です。

柔軟な管理ツール

管理者は、全ての詳細設定が扱えるGUI管理ツール(Windows用)を利用できます。直感的な操作で複雑なVPNサーバーを管理できます。

同時に、強力なコマンドラインユーティリティ「vpncmd」も提供されます。スクリプトによる自動化や、詳細なパケットロギング、ユーザー単位でのアクセスコントロールリスト設定など、高度な運用に対応します。

目次に戻る

PacketiX VPNの圧倒的なIPv6対応力

この記事のテーマであるIPv6対応において、PacketiX VPNのレイヤ2アーキテクチャは決定的な優位性を持ちます。

L2アーキテクチャによるシームレスなトンネリング

PacketiX VPNは、IPv6パケットを含むイーサネットフレーム全体を、SSL-VPNトンネルにそのまま封じ込めます。このトンネル自体は、既存のIPv4インターネット網(IPv4/HTTPS)上で動作します。

これにより、NATやファイアウォールの問題を抱えていた従来のIPv6 over IPv4技術(6to4など)の欠点を根本的に解決します。私が評価する点は、既存のネットワーク機器の設定を一切変更することなく、IPv4網を透過してIPv6ネットワークを構築できることです。

「Any-on-Any」トポロジの柔軟性

このL2アーキテクチャは、トランスポート層(トンネル自体)とペイロード層(トンネル内)のあらゆる組み合わせを実現します。

  • IPv4 on IPv4|標準的なリモートアクセス
  • IPv6 on IPv4|既存のIPv4網上で、プライベートIPv6ネットワークを構築
  • IPv4 on IPv6|IPv6 IPoE環境上で、IPv4のみ対応の社内アプリを利用
  • IPv6 on IPv6|完全なエンド・ツー・エンドのIPv6 VPN通信

この「Any-on-Any」の柔軟性こそが、IPv4からIPv6への長い移行期間において、PacketiX VPNを理想的な「ネットワーク・ブリッジ」として機能させます。

IPv6専用の管理機能

PacketiX VPNは、IPv6トラフィックを単に透過させるだけではありません。「仮想ハブ」(仮想スイッチ)はIPv6パケットを認識し、IPv4と同等の詳細な管理機能を提供します。

管理者は、「IPv6パケットフィルタールール」を定義し、セキュリティポリシーを適用できます。内蔵のSecureNAT機能(仮想ルータ)は、VPNクライアントに対してIPv6アドレスを自動的に割り当てる設定も行えます。

目次に戻る

PacketiX VPNの具体的な活用シーン

PacketiX VPNの柔軟なアーキテクチャは、テレワークからクラウド統合まで、多岐にわたるシーンで活用されています。

テレワークと拠点間接続(LAN-to-LAN)

最も標準的な利用形態は、従業員が自宅や外出先から社内LANに安全に接続するリモートアクセス(テレワーク)です。

私が特に注目するのは、L2ブリッジ機能が真価を発揮する拠点間接続です。地理的に離れた複数の支社を接続し、あたかも単一のL2ネットワーク(同一セグメント)であるかのように統合します。これは、拠点間でIPアドレス体系を統一したい場合や、ブロードキャストに依存する古いアプリケーションを利用する場合に不可欠です。

ハイブリッドクラウドとレガシー移行

このL2ブリッジ機能は、現代のハイブリッドクラウド移行における「秘密兵器」とも言えます。オンプレミスのL2セグメントを、AWSやAzureといったパブリッククラウドにそのまま「延伸」できます。

クラウドネイティブのVPNソリューションはL3(IPルーティング)で動作するため、L2ブロードキャストに依存するレガシーな社内アプリケーションには対応できません。PacketiX VPNは、これらのアプリケーションを一切改修することなく、そのままクラウドへ「リフト&シフト」することを助けます。

国内の主要な導入事例

日本国内での導入事例は、その実用性と信頼性の高さを裏付けています。

導入企業・機関業種課題
株式会社あきんどスシロー外食産業全店舗PCの遠隔管理を低コストで実現
内閣官房情報セキュリティセンター (NISC)政府機関独自セキュアVMにVPNをカーネルレベルで統合
日本貿易振興機構 (JETRO)政府系機関通信が不安定な海外拠点との接続安定化
讀賣テレビ放送株式会社メディア報道記者が現場から社内NWへアクセス

目次に戻る

PacketiX VPNの製品ラインナップ

PacketiX VPNには、企業や個人のニーズに応じたさまざまなバージョンがあります。

それぞれのバージョンごとに特徴が異なり、用途に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。

PacketiX VPN 4.0

PacketiX VPN 4.0は、最新の技術を取り入れた最上位バージョンで、高度なセキュリティ機能とパフォーマンスを提供します。

企業向けの利用を前提としており、特に大規模ネットワーク環境での運用に適しています。

主な特徴

  • 最新の暗号化技術を採用:より強固なセキュリティでデータを保護
  • 大規模ネットワーク向けに最適化:多拠点間の通信を高速かつ安定して実現
  • ユーザー管理機能の強化:Active DirectoryやRADIUS認証との連携がスムーズ
  • 仮想HUBの管理が簡単:拠点ごとのVPN管理が容易になり、ネットワーク統合がしやすい
  • IPv6対応:次世代インターネットプロトコルに完全対応

PacketiX VPN 4.0は、大規模企業や教育機関など、複雑なネットワーク環境を持つ組織に最適な選択肢です。

PacketiX VPN 3.0

PacketiX VPN 3.0は、安定性と互換性を重視したバージョンで、旧バージョンからの移行がスムーズに行えます。

特に中小企業向けのネットワーク環境に適しており、比較的安価で導入できる点も魅力です。

主な特徴

  • 従来のPacketiX VPN 2.0との互換性を保持
  • SSL-VPN、IPSec VPNの併用が可能
  • NATトラバーサル機能が強化
  • リモートアクセスVPNと拠点間VPNの両方に対応
  • 低コストで導入できるライセンスプラン

PacketiX VPN 3.0は、安定したVPN環境を求める中小企業にとって最適な選択肢となります。

PacketiX VPN 2.0

PacketiX VPN 2.0は、基本的なVPN機能を備えた初期のバージョンで、比較的シンプルなネットワーク環境向けに開発されました。

すでにメインストリームのサポートは終了していますが、一部の企業や個人ユーザーは今でも利用しています。

主な特徴

  • シンプルなVPN構成が可能
  • リモートアクセスVPNとしての利用に適している
  • 軽量で動作が速い
  • サーバー負荷が少なく、小規模ネットワーク向けに最適

PacketiX VPN 2.0は、個人ユーザーや小規模オフィスでの利用に向いており、高度な管理機能は不要だが基本的なVPN接続を確立したい場合に適しています。

PacketiX VPNのエディション別比較

バージョン対象ユーザー特徴セキュリティネットワーク対応サポート状況
PacketiX VPN 4.0大企業、政府機関、教育機関最新機能、高性能、高い拡張性非常に強固(最新暗号化技術)IPv6完全対応、多拠点向け現行サポート
PacketiX VPN 3.0中小企業、個人事業主安定性と互換性を重視強固(SSL-VPN、IPSec併用)NATトラバーサル機能強化現行サポート
PacketiX VPN 2.0個人ユーザー、小規模オフィスシンプルで軽量基本的なVPN暗号化小規模向けサポート終了

PacketiX VPNは、バージョンごとに異なる特徴を持っており、用途や規模に応じた選択が求められます。

最新バージョンであるPacketiX VPN 4.0を利用することで、より高度なセキュリティとネットワーク管理を実現できます。

目次に戻る

PacketiX VPN(SoftEther VPN)を始める手順

PacketiX VPNの中核技術を引き継ぐSoftEther VPNは、無償で利用を開始できます。ここでは、基本的なセットアップ手順を詳しく解説します。企業向けの利用だけでなく、個人での使用にも対応しています。

STEP
PacketiX VPNのソフトウェアをダウンロード

PacketiX VPNの公式サイトからPacketiX VPNソフトウェアをダウンロード、またはパッケージ版を購入します。

ダウンロードするソフトウェア

  • PacketiX VPN Server(VPNサーバーを構築する場合)
  • PacketiX VPN Client(VPNクライアントとして利用する場合)
  • PacketiX VPN Bridge(ローカルネットワークをVPNに接続する場合)

サーバーを構築する場合は「PacketiX VPN Server」を、クライアントとして接続する場合は「PacketiX VPN Client」を選びましょう。
64ビット版と32ビット版が提供されているため、使用しているOSに合ったものを選択してください。

STEP
PacketiX VPNのインストール

ダウンロードしたインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールを進めます。

インストール時の注意点

  • インストールモードを選択する画面では「サーバーモード」または「クライアントモード」を選択
  • インストール後、自動的に「VPN Server Manager」または「VPN Client Manager」が起動

サーバーを構築する場合は、VPN Server Managerを使用して設定を進めます。

STEP
VPNサーバーの設定

VPNサーバーを構築するために、VPN Server Managerを使って設定を行います。

  1. VPN Server Managerを起動
    インストール完了後、自動的に起動されます。手動で起動する場合は、[スタートメニュー]から開きます。
  2. 仮想HUBの作成
    VPNを運用するためには「仮想HUB(ハブ)」が必要です。
    • VPN Server Managerの画面で「仮想HUBの管理」を開く
    • 「新しいHUBを作成」を選択し、任意の名前を入力
    • 作成したHUBに管理者パスワードを設定
  3. ユーザーの作成と認証設定
    VPNに接続するユーザーを登録します。
    • 「ユーザー管理」から「新しいユーザーを作成」を選択
    • ユーザー名とパスワードを設定
    • 認証方式を選択(パスワード認証・証明書認証など)

この設定により、VPN接続時のセキュリティが確保されます。

STEP
ローカルブリッジの設定(社内ネットワーク接続時)

VPNサーバーを通じて社内ネットワークにアクセスする場合は、ローカルブリッジを設定します。

  1. VPN Server Managerで「ローカルブリッジの設定」を開く
  2. 接続するHUBを選択し、ネットワークアダプタを指定
  3. 設定を保存し、適用ボタンを押す

この設定を行うことで、VPNクライアントが社内LANにアクセスできるようになります。

STEP
VPNクライアントの設定

VPNに接続する端末では、PacketiX VPN Clientをインストールし、設定を行います。

  1. PacketiX VPN Client Managerを起動
  2. 「新しい接続を作成」ボタンをクリック
  3. 接続設定を入力
    • 接続名:任意の名前(例:「会社VPN」など)
    • サーバーのホスト名またはIPアドレス:VPNサーバーのアドレスを入力
    • ポート番号:デフォルトは「443」または「992」
    • 仮想HUB名:VPNサーバーで作成した仮想HUBの名前
    • 認証方式:設定したユーザー名とパスワードを入力
  4. 接続を保存し、接続ボタンを押す

正しく設定されていれば、VPNサーバーに接続され、仮想ネットワーク内で通信できるようになります。

STEP
VPN接続の確立と動作確認

設定が完了したら、VPNに接続し、通信が正常に行われるか確認しましょう。

接続確認の方法

  1. VPN Client Managerで接続を開始
  2. IPアドレスの確認
    • VPN接続前後でIPアドレスが変更されているかチェック
    • コマンドプロンプトでipconfigを実行し、VPNの仮想ネットワークアダプタが表示されているか確認
  3. 社内ネットワークやリモートサーバーへの接続テスト
    • 社内ファイルサーバーにアクセス可能か確認
    • pingコマンドでVPNサーバーに通信できるかテスト

問題なく通信できれば、PacketiX VPNの設定は完了です。

STEP
追加のセキュリティ設定(オプション)

VPNをより安全に運用するために、追加のセキュリティ設定を行うことをおすすめします。

  • SecureNATの設定
    • SecureNAT機能を有効にすると、VPN接続時に自動的にIPアドレスが割り当てられます。
      VPN Server Managerの「SecureNATの設定」から有効化できます。
  • ファイアウォール設定
    • VPN接続を許可するポート(例:443、992)をファイアウォールで開放します。
      また、不要なアクセスを防ぐため、外部からの不要な通信をブロックするルールを設定しましょう。
  • クライアント証明書認証の導入
    • より高度なセキュリティが必要な場合は、証明書認証を利用すると強固な認証が可能です。
      証明書を発行し、クライアントに適用することで、不正アクセスを防ぐことができます。

目次に戻る

まとめ

PacketiX VPN、そしてその後継であるSoftEther VPNは、日本の学術研究から生まれた世界レベルのVPNプラットフォームです。その中核にある「レイヤ2アーキテクチャ」が、他のVPN技術とは一線を画す柔軟性を生み出しています。

特に、設定不要で透過的に実現されるIPv6サポート能力は圧巻です。IPv4とIPv6が混在する現代のネットワーク環境において、これほど強力な「ネットワーク・ブリッジ」は他にありません。

VPNインフラの統合、レガシーアプリケーションのクラウド移行、そしてIPv6ネットワークの構築を計画しているすべての人に、私が自信を持って推奨するソリューションです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この記事をSNSでシェアしてね!
タップできる目次